虫歯を説明する時に「虫歯菌」と言う言葉をよく耳にしますが、これは虫歯の原因を作る細菌のことです。
虫歯の原因となる細菌の中でも最もパワーがある細菌は、スプレプトコッカス・ミュータンスです。
一般的には「ミュータンス菌」と呼ばれている細菌の1つです。
「甘いものを食べると虫歯になる」という言葉もよく耳にしますが、
甘いものが直接、虫歯を作っているのではありません。
でも、甘いものが虫歯を作る時に暗躍しているのも確かです。
虫歯の原因となるミュータンス菌は、糖と結合することができます。
これが「プラーク」と呼ばれる歯垢(しこう)です。
プラークは、デンタルプラークとも呼ばれます。
「デンタルプラークをケア」などの言葉は、歯垢という歯の汚れに対応するということです。
プラークは平面にもぺたっと付着できる糊(のり)のような性質です。
だから水やお茶を飲んだだけでは、簡単に除去できません。
しかも、プラークはちょっとした溝や隙間にも押しこまれるように発生します。
1度できたら徹底的に除去しないと、口内にミュータンス菌が住み続けてしまいます。
歯と歯の隙間や、なかなか歯ブラシが当たらない場所を鏡でチェックしてみましょう。
もしも黄みがかったものがあったらプラークを疑ってください。
歯の表面や隙間にくっついたプラークの中では、ミュータンス菌が糖を利用して、乳酸菌など「酸(さん)」を作りだします。
糖質はもっとも酸を作る時に利用されやすいのです。
糖質と言っても砂糖もキシリトールも糖質です。
でも砂糖の主成分であるスクロースが酸を生産しやすいと言われています。
逆にキシリトールは、砂糖のようには酸をたくさん生産しないので虫歯予防で重宝されています。
プラークの中で酸が大量生産されると、口内が酸性に傾きます。
これはとってもミュータンス菌にとって好都合な環境です。
なぜなら酸性に傾いた口内では、歯の表面のエナメル質が溶けてしまうのです。
しかし溶け始めても、唾液が口内に発生することで酸性に傾いていた環境は、アルカリ性に戻ろうとします。
アルカリ性に戻る場合は、溶かされそうになったエナメル質を修繕してくれます。
この溶けたエナメル質を修繕することを、「歯の再石灰化(さいせっかいか)」と呼びます。
「じゃあ唾液があれば、再石灰化で歯は守られるよね・・」と思われますが、プラークがある限り、酸の発生は終わりません。
最初は抵抗していたエナメル質も何度も酸性になることで再石灰化が追いつかなくなります。
何度も再石灰化を繰り返すにも、その間にまた口内が酸性になってしまったら最後まで修繕できなくなってしまうというわけです。
そして、こうなってしまう原因は歯にプラークがあるからです。
酸の生産工場であるプラークを除去しない限り、あなたの歯の中は酸性になってエナメル質が溶けだす機会がいつでもあるのです。
歯の表面に攻撃を続けるプラークは、いつまでも歯の中に残ったままだと石灰化されて「歯石(しせき)」になります。
よく「頑固な歯石」なんて言葉を聞きますが、その通りで歯石はプラーク以上に頑固で強硬なのです。
歯の表面についたプラークは唾液に触れているので、ふやけた天かすのようです。
プラークはしっかり歯磨きをしたり、歯間ブラシで隙間の汚れをかき出すことで除去します。
でも、歯石となると簡単にはとれません。
歯科で器具を使って取りのぞいてもらいます。
歯科でもスケーラーという鎌のような形をした器具で削るように除去する方法や、超音波など、状況によって歯科医師が判断してくれます。
スケーラーは自分で購入して使うこともできますが、歯石は歯茎のすぐ上に付着することが多いので、スケーラーで歯茎を傷つけて出血させてしまうと心配です。
歯石は直接的には虫歯の原因にはなりません。
でも、歯石は歯の沈着物ですから、その上にはプラーク(歯垢)が付着しやすくなるのです。
つまり、プラークを放っておかないことが虫歯の原因菌を減らす第一歩です。
赤ちゃんも乳歯が生えたら、パパやママと同じように歯のケアを始めましょう。
赤ちゃんだって、プラーク(歯垢)がついて放置されたら歯石が発生してしまいます。
歯石は唾液中のカルシウムがプラークに作用し、付着します。
赤ちゃんは唾液を上手に飲み込めずに、口元を汚してしまうこともありますね。
そんな時は口内に唾液がいっぱいあるので、プラークがあったら歯石になりやすい環境を作ってしまいます。
赤ちゃんは唾液を飲みこんで調節することができないので、乳歯が生えたら歯の下の方が変色していないかチェックしましょう。